『白痴』について
読みました。青空文庫で
そのうえで、舞台『白痴』に対して思ったのは
「富士山が綺麗だから」描かれた富士山の絵はなく、
「綺麗な青い絵の具を使いたいから」描かれた富士山の絵
だなぁと。話については私のパーソナルな地雷を踏みぬかれ、思うところが一つや二つどころじゃなくありました
1回しか観ていないので、聞き逃しだったら申し訳ないのですが、坂口安吾『白痴』が“東京大空襲”を下敷きにしているのに対して、舞台の空襲シーンでは“そう”見せないようにしていたんじゃないのかなと感じました。“東京大空襲”の苦しい記憶を持った人たちがまず読んで、それから全国各地で似たような痛みを抱えた人たちに広まったんじゃないかなぁと思うのですが、どうなんでしょうね。残念ながら私は70年前の世界には生まれ落ちていませんので分かりませんけれども。
・伊沢
とにかくビックリするぐらいに感情移入が出来ませんでした。「コイツ痛い目見ればいいのに」っていう嫌悪感がたまらなくて、自身の妄想で苦しむ姿は非常にスカっとジャパン。だからこそ、「物語の終わりが伊沢の終わりだったらよかったのにな~!」とマジで思いました。
・仕立て屋
小説読んだら、息子を肺病で亡くしているようで、心が痛かったです。街の住人の入れ替わりがあるはずなのに、「元からこんな街」と言えるのは、多少なりとも彼も狂っているのでしょう。
・少尉
中村龍介さんの軍服姿がかっこいい!!!!数年前に、何かの舞台でお姿を拝見したきりでしたが、良い年齢の重ねられ方をされていて……もう……かっこいい!!!!声にも貫禄があって……もう……かっこいい!!!!
「戦時中の教育の賜物」って話もありますが、別に今のような「ひとりひとりがかけがえのないもの!」という教育を受けた中でも、少尉のような価値観を持つ人はいると思います。作中でも言い争いがありましたが、相容れない価値観をぶつけ合うのはあまり生産的ではありませんね(そこ?)
煙草屋の証言でしか出てきませんでしたが、再召集がかかって、丸めた布団で声を殺して一晩泣いて、目の前の逃げようがない「死」と向かい合い、「美しい顔」でその地に赴く、というシーンが心に残りました。ドラマやアニメではなく、マンガで観たいシーンでした。なんかこう、キラキラのトーンでエフェクトかけてさ…
とにかく、中村龍介さんがかっこよかったです
・家鴨
スタイルがいい、シュっとした男性の碕理人さんが…まさかの妊婦…!がっつりお腹が大きかったですし、ものすっごいガニ股でした
初日のTwitterにあがった画像を見て、「え、違和感ない」とビックリしましたし、劇場で観てから「中学校の時の部活の同級生に似てる……」と……。気まずい
豆腐屋の妾になると決まってからの、あの穏やかな感じは凄いなぁと思いました。前半の荒れている感じもすごくよくて、しかも、最低限の女らしさ(時代的な表現ですが)があって、気品もありました。なんだろう、ただのアバズレじゃない感じが良かったです。そら、身請け先も決まるわ
現代の服になった……あの、ロングスカート……碕さんのファンの友達のファッション……!気まずい
がっつり殺し屋の檸檬くんやったあとに、妊婦家鴨ちゃんやれちゃう碕理人さんがアツい2018年!!
・母親
ともすればギャグ・お笑い要員になりがちなのに、ヒステリィのわけのわからなさ、怖さが良かったです
自分の思い通りにならない白痴の嫁に対する腹立たしさも分かるし、唯一の肉親を失ってその嫁を唯一の拠り所にせざるを得ない悲しみがゾワっとしました
これ何回か観たら、絶対夢に出ます
・煙草屋
もう、色んな醜さが、少尉の美しい顔に心を動かされたシーンで全部チャラです!!あれはもう、好きです!!すggggggggggggggっごい好き
・サヨ
伊沢と並んで感情移入が1ミリも出来ないキャラクターで、しんどい。家鴨のことを「腹の子供より、今日の晩御飯のおかずを1品増やすことに腐心している」って罵るのが、一番無理かな。だって当たり前じゃん。まだ見ぬ命より、最も一番身近な命のために、しかも、たった1品のおかずのことを考えて何が悪いんですか?(デブ正論)
・社長
とっとと伊沢をクビにすればいいのに、しなかったのは、ああいう文化人はプロレタリアだのなんだのかぶれだったのかなぁと
好意的にとらえるなら、本人は伊沢のように映画を撮りたいと思っていたが、お上がそんなの許さないし、お上に逆らえば映画会社も潰されて社員と社員の家族の生活が…って苦悩していてほしい
・きちがい
・振り幅
過去1年間で、『遠い夏のゴッホ』『ギャングアワー』『白痴』の三作を見に行きました。たった三作の印象なので、マジで木ノ本くんのファンからの夜道で刺されても仕方ないと思いながら書いています
『ギャングアワー』のときに既に「え!?これ、ホセちゃん!?」とビックリしていました。全然違ったので。ミミズと人間が同じように見えたら、それはそれでヤバいと思いますが……。ホセは【純度100%の白】、一方田中は千穐楽エンディングで「こりゃ、将来三鷹さんを越えるぞ」と思うような【純度100%の黒】と思いました。この時点で、私の中の木ノ本くんの振り幅は、左右に大きく振れていました
そして『白痴』。気違いであるが故の【純度100%の白】であり、【純度100%の黒】が共存していました。私の中の木ノ本くんへの印象の振り子は左右にでは無く、ぐるんぐるんと大きな円を描くようになりました
・説得力
公演を思い返し、気違いの演技にどこか既視感がありました。堺雅人さんでした。テレビの画面越しでも伝わる圧倒的な説得力が、木ノ本くんにはありました。『リーガルハイ』古美門研介のめちゃくちゃなことを言っているのに、相手にぐうの音も出させない説得力の強さ。木ノ本くんの気違いには、そういう聞いているものの心を、自分に向けさせる強さがありました
木ノ本さんのファンは、明日の公演・次の現場も楽しみなのでしょうが、私は木ノ本さんの10年後20年後も観てみたいなぁと思いました。どれだけ、言葉に迫力を乗せられるようになっているのだろうか、と思います
・ほか
衣装がものすごく似合っていて、帽子とコートが最高に素敵でした!
あとね、カウントダウンの「10、9、8、7、6…」の右手の動きが最高でした!!
劇場出てから、誘っていただいたお友達と「嶺浩さんがかっこよかった…」と言いまくりました…すごかったです。すごい
好き!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
声がかっこいい!!
あのさ、「見目麗しい若武者」でウインクするのがたまらんかったです……。最高でした
公式ブログに『誰よりも人間?この女が?……欲しければやろう。』ってありましたけど、あまりにもゴールドロジャー……
坂口安吾の『白痴』の舞台化かどうかと聞かれたら、正直NOだと思います。『白痴』に出てくるキャラクターを使った、全く別の作品だと思います。2次創作というより、1.5次創作、みたいな…?(?)
序盤にきちがいが屋根からドンと落ちる音とか、マンガのコマ割りのような白いテープとか、すごく演出に気を使っている舞台だなぁって思いました。